※この物語は完全なるフィクションです。登場人物、団体の名称は現実とは何も関係ありません。
O博士は小躍りした。
白衣代わりに着た白い割烹着の胸のあたりを押さえると、自分の鼓動が高鳴っているのがわかった。
「まだだ。偶然かも知れない」
科学は実験と検証だ。
一度偶然に成功しても、そこで発表したら科学者として笑われてしまう。
仮定が実証されるまでには、まだ検証を続けていかなくては……。

大学を卒業して5年。同級生の中には結婚して子供のいる人もいるが、私は大学院に進学し研究の道を進んだ。
女性としてどちらが幸せかということを言い始めると、有機体としての生物の目的なら繁殖だろうと推論されるが、私には研究で世界をアッと言わせたいという、ささやかではない夢がある。
そのために私はLIKENに入所したのだ。
その夢の可愛い尻尾を捕まえたのかも知れない。
尊敬するスナフキンも言っていた。
「大切なのは、自分のしたいことを自分で知ってるってことだよ」
私は、研究がしたい。
